2012年5月3日木曜日

MHSライトセーバーの作り方

かっこ良くて明るく輝くLEDライトセーバーを一番簡単に作れる方法、それが米国のThe Custom Saber Shop(TCSS)が販売しているMHS(Modular Hilt System)だ。パーツをチョイスして、適当に組み合わせて、内部の電気パーツをハンダづけしたらもう出来上がり。

私が最初に組んだのもそんな感じで、ものの1時間もかからなかった。音を鳴らせたり、もっと明るいものを作ろうとするとそれなりに手間がかかっていたのだが、それも最近は楽になっている。

以下、Petit Crouton制御基板を使い、音が出て、明るく光るMHSライトセーバーを作る場合、主にパーツ選びをどうすればいいか説明する。なお、TCSSに発注するためにはクレジットカードが必要なので、使えない人は誰かを頼るか諦めるかして下さい。

MHSライトセーバーに必要なパーツは下記の通り。TCSSへのリンクは記述当時。
(2013.4.6改訂)

1. ブレード(刀身)
これはTCSSで完成品が売ってるので買えばいい。ポリカーボネート樹脂製でかなり強靭。直径は1インチのものを選ぶ。他のはアダプターが必要になる。
長さは34インチか36インチがいいだろう。2インチ弱がブレードホルダの中に入るので、刀身の長さはそれを引くといい。つまり34インチなら32インチ≒81.28cm、36インチなら34インチ≒ 86.36cm。
ブレードのタイプはShow Bladeで問題ない。チャンバラにも充分使える。Battle Bladeは重すぎる。
CorbinとTCSSスタイルがあるが、これはブレード内部の光散乱素材(ディフューザー)の違い。ブレード内部には本体のLEDからの光を散乱させて、より明るく輝くようにするための素材が入っている。Corbinは中にラップが入っていて、光らせると光のコアがあるように見える。ラップの巻き数はQuad(4重)にしたほうがいい。Double(2重)では暗い。TCSSスタイルは白色の筒が入ってる。先端(blade tip)の形状はお好みで。

2. ヒルト(本体)
LEDや電池、制御基板を蔵める本体はいくつかのパーツに分かれている。基本的には、Blade Holder、Main Body、Pommelの3つに別れる。この本体のことをヒルト(刀の柄の部分)という。

a. Blade Holder(ブレードホルダ)
ブレードを支える部分。同時に、LEDとレンズ、ヒートシンクを押さえる役割もある。ブレードを固定するにはイモネジ(セットスクリュー)を使用する。ただし、そのためのネジ穴は開いていないので、ネジ穴作成サービスを別途依頼しないといけない。Thread Size(ネジ穴径)は8-32を選び、Location(作成場所)には「Blade Holder」と書いておけば、適当な位置に開けてくれる。英語ができるのならもっと細かく指定してもいい。同時に、8-32のネジ穴径にあうネジも注文すること。米国と日本ではネジ穴の規格が違うため、TCSSで開けてもらったネジ穴には日本で買ったネジが入らない。

b. Main Body
電池やスイッチ、制御基板などを蔵める本体部分。これはスイッチ穴の形状によって2つに別れる。一つはStandard Switch用。本体に設置するのが楽だけど、いまいち物足りないし誤操作しやすいもの。
SPSP Standard Switch

もうひとつはGuarded Style用。設置がちょっと面倒だけど、その名の通りガードが付いてて誤操作しにくく、それなりに見栄えもするもの。
SPST Guarded Style

どちらのスイッチを使うかを決めて、好みのデザインのメインボディを買うとよい。

c. Pommel
刀の柄頭の部分。これも好みでデザインを選ぶ。ただし、柄頭の底は穴が開いているだけになっており、別途、MPS Insert(例1例2) というものを買って塞ぐようになっている。これもデザインが数種類ある。このInsertはMPS ClipといういわゆるCリングで固定する。このCリングは先の細いラジオペンチや専用の工具(Cリングプライヤー)を用いて装着する。

基本的にヒルトはこれらのパーツだけでも問題ないが、他にも幾つかのパーツが存在する。

d. Extention
ヒルトの長さを伸ばすためのパーツ。なのだけど、私はこれらのパーツに穴を開けてメインボディ替わりに使ったりしている。スイッチホールを開けるサービスを使えば、そういうことも可能である。

e. Choke
ヒルトにくびれを作るパーツ。引っかかりが出来て持ちやすくなる。私が最初に作ったMHSで使った。

これらヒルトのデザインについては、TCSSサイト内にMHS Builderというツールが用意されているので使ってみるといい。組み合わせた際のヒルトの長さまで計算してくれる(インチ/ミリ切り替えもできる)。

大事なのはヒルトの長さ。電池や制御基板が収められつつ、スイッチと干渉しない様な長さを考慮しなければならない。Blade Holder、Main Body、Pommelを組み合わせると、大体25cm程度になる。それより短くなると内部パーツを収めにくくなる。私の場合は持ちやすさを考慮して32cm程度に収めるようにしている。それより長いとブレードとのバランスが悪くなる。

各パーツともにパウダーコート塗装を有料で依頼することも出来る。パーツごとに塗装パターンと色指定を行うことによってデザインにアクセントを付けることが出来る。パウダーコート塗装は塗膜がかなり強靭で手荒に扱っても塗装が剥がれることが少ない。サンドペーパーで擦ってもなかなか剥がれなかったぐらいだ。

パウダーコート塗装の例

3. スイッチ
幾つかの種別がある。おおまかに分けるとMomentaryとLatchingになる。Momentaryはその名の通り、押している間だけ有効になるスイッチ。Latchingは押し込むとOnの状態を維持し、もう一度押すとOffになるスイッチ。音や光の制御を行う制御基板の種類によってどちらを使うかが決まるが、Petit Croutonの場合はメインスイッチならどちらを使っても問題ない(サブスイッチはMomentaryでないといけないが)。
AVスイッチを使うと、スイッチが点灯してカッコいいけれどMain Bodyには入らないから、穴あけを依頼しないといけない。
AVスイッチ
また、AVスイッチはShortスタイルでないとヒルトには収まらないので注意。さらに内部のLEDを光らせるための配線も必要。スイッチ用配線はLED用配線を兼ねていない。因みにAVスイッチのAVはAnti-Vandalの略。乱暴に扱っても誤操作しにくいという意味のようです。

※Petit Croutonの機能のうち、つばぜり合い効果やブラスター防御を使いたい場合、メインスイッチの他にサブスイッチが必要になる。今回の例ではややこしいのでサブスイッチは設けない。

4. LED
LEDにも幾つかの種類がある。TCSSが取り扱っているのは次の4つ
  • Luxeon Rebel
  • Luxeon Tri-Rebel
  • Seoul P4
  • Ledengin
明るさは正直使ってみないとわからない。Luxeon Tri-RebelはLEDを3つ、LedenginはLEDを4つ集積したものだけに、全て同時点灯させると相当明るいが、電力消費もその分大きくなる。
LEDは単独だと光を周囲に散乱させるだけなので、必ずレンズとレンズホルダを用いる。LEDにそれぞれ専用のレンズホルダが用意されている。レンズはRebelは8.7deg、P4は5degのものを用いると良い。Luxeon Tri-Rebelは専用レンズが用意されている。Ledenginのレンズは5degのものが良いようである。レンズがレンズホルダに上手くハマらないケースがあるので、その際は小改造が必要になる。
PetitCrouton の機能の一つ、FoC(Flash on Crash : 衝撃時フラッシュ)を行いたい場合は、LedenginまたはTri-Rebelのマルチカラー版を選ぶ。配線はそれなりにややこしくなるし、ハンダ付けが必須になる。
制御基板を用いず、音も出さず、LEDを光らせるのみの場合、電池とLEDの間には必ず電気抵抗、もしくはLEDドライバを入れること。LEDには定格電圧、電流があり、定格以上を流すと壊れる。

5. ヒートシンク
LEDはかなり高熱になるためそのまま放置すると自壊しかねない。熱を分散させるための、そしてヒルトに固定するための専用ヒートシンク(例1例2)が用意されている。ブレードホルダを発注する際に、併せて注文できる。LEDをヒートシンクに固定するには熱伝導両面テープを用いると良い。
LEDのハンダ付けはちょっとだけ難しいかもしれない。ヒートシンクと組み合わせたハンダ付け済み商品が売られているのでそれを利用するのもいいが、その場合はFoCはできなくなる。

6. 電池
Petit Croutonを使う場合、5.5V以上の電源電圧が必要になる。市販されているアルカリ乾電池を使う場合、一本1.5Vなので4本(6V)必要になる。アルカリ乾電池を毎度4本ずつ交換していくのは不経済だから、出来れば充電池を使ったほうがいいのだが、市販で手に入るニッケル水素充電池は1.2Vなため、5.5V以上にする場合、5本以上必要になり、それだけの電池をヒルトに収めるのはちょっと難しくなる。
リチウムイオン充電池ならば、一本3.7Vなので2本で済む。ただし、自分でハンダ付けを行なって配線する場合、取り扱いを間違えるとすぐショートして火災のもとになりかねないので注意が必要。

(12/9/14追記)
TCSSはリチウムイオン充電池の海外発送を行わなくなった。万国郵便条約ではリチウムイオン電池を空輸してはならないと定められており、それで制限されていると思われる。私の場合は保護回路も含めてeBayで販売を行なっている香港の業者から仕入れている。その業者の発送は船便なので万国郵便条約に引っかからないのだ。船便だから到着まで時間かかるけど。

リチウムイオン充電池を使う場合、電池パックを作成して充電ポートを用いるといちいち電池を取り出さなくても充電出来て便利なのだが、あいにくそれ専用の充電器が高い上に手に入りにくい。また、配線もややこしくなるから、ここでは用いない。
リチウムイオン電池は二本組のProtected 14500 900mAhを用いる。Protectedとは電池内に保護回路が入っているという意味。リチウムイオン電池は過充電、過放電に敏感で爆発、発火を起こしやすい。そのため保護回路を入れて、過充電、過放電を防ぐようになっている。知識がない人は保護回路無しのは絶対に使わないように。リチウムイオン電池の爆発発火は恐ろしい。

発火実験動画を2つご紹介。「Lipo Fire」で検索するとたくさん出てくる。

おもちゃで家を焼きたくないよね

14500とは電池の径が14mm、長さが500x1/10mm(つまり50mm)という意味。900mAhとは電池容量を示し、900ミリアンペアの出力だと1時間使えるということ。Seoul P4やLuxeon Rebelの場合、LEDを1000mAhあたりで動作させることが多い。スピーカーなどにも消費されるし、容量全部を使い切る事ができない(発火につながる過放電を防ぐため、一定以下に電圧が下がると保護回路が働いて電力供給が切られる)から一概にはいえないが、大体40分ぐらいは連続稼動できるかなと。
リチウムイオン充電池には容量の大きい18650や17500などもあるのだが、残念ながらそれを入れられる電池ホルダーがTCSSでは売ってないし、サイズが大きくなるためヒルト内に収めにくくなる。
併せてリチウムイオン専用充電器を買っておくこと。14500の保護回路付きリチウムイオン充電池自体は国内でも買い求められる。

7.  電池ホルダ、及びスピーカー
14500電池が収められるものが売ってるのでそれを使うと良い。それにあったスピーカーホルダー1Wスピーカーまたは2Wスピーカーを購入する。2Wの方が音が大きく深みがある。スピーカーへの配線はハンダ付けが必要で、スピーカーホルダーの加工もちょっと必要になってくる。電池ホルダーとスピーカーホルダー、スピーカーは接着剤で貼り合わせる。
スピーカーホルダーがちょうどMain BodyとPommelに挟み込まれて固定されるようになってるので、接着さえしっかりできていれば激しく振り回しても内部で電池があちこちにぶつかるようなことがない。
組み合わせ済みのものも売っているが、自分で組むより割高に。

8. Petit Crouton
ある意味主役。LEDへ流す電流を制御し、光と音の様々な効果を発生させる。ハンダ付け済みのものが売られているのでそれを使うと楽。ただ、配線の長さは足りないことがあるかも知れないから、そこだけは自分で配線を継ぎ足して延長するなりの作業が要る。
また、どの線を何と繋ぐかを知らなければならないし、スイッチ種別やLEDに流す電流、アクションに対する感度などはSDカード内のconfig.txtをいじる必要があるので、マニュアルは熟読しておくべき。ただし英語。有志(つってもほとんど俺)が翻訳した和訳マニュアルはコチラ。開発元のPlecterLabsに掲載いただいたウッチーさん作のPDF版はコチラ


2013.4追記
最初に記事を書いた当時(2012年5月)、制御基板としてはPetit Croutonを推奨するほかなかったのだが、2012年10月に廉価基板のNano Biscotteがリリースされた。FoCなどは出来ないがコレを使えばもっと簡単かつ安価にライトセーバーを作れる。ただしマニュアルは和訳されてない。


スイッチやLED、スピーカーは配線済みのものが売られている。最近になって販売され始めたもので、MWS(Modular Wiring System)という。MWSを用いればハンダ付けの必要もなくコネクタを組み合わせるだけで配線が完了となり、後はヒルト内に各パーツを設置すればライトセーバーが出来上がる(電池に14500リチウムイオン電池を使う場合は、スピーカー、スピーカーホルダー、電池ホルダー周りへの配線とPetit Croutonへの接続にハンダ付けが必要になる)。

9.ハンダ付けについて
慣れればそんなに難しい作業ではないが、扱い方を間違えると火事や事故の元になる。ハンダ付けについて解説しているサイトや動画がいくつかあるのでよく見て学び、簡単な電子工作キットを買うなどして練習をしたほうがいい。
下記は内容が少し古いがハンダ付けを含む、MHSの製作過程。
なんかの参考にはなるっしょ

MHSの工作に関して言うと、ヒルトがアルミでできており、回路や配線が接触すると容易にショートしてしまう為、絶縁には特に気をつけるべきである。配線同士を結線させる部分は必ずヒートシュリンクチューブ(熱収縮チューブ)を使って絶縁を行うこと。ヒートシュリンクチューブはTCSSでも売ってるしホームセンターや大きな電気屋ならば必ず置いている。径1.5mmや2mmのものが使いやすいと思う。
ハンダ付きのハンダコテが売っているので一本だけ作って終わりにするのならそれを使ってもいいだろう。しかし、Petit Croutonのハンダ付けを行うのなら、先端が細く、温度調整の出来る5000円ぐらいのハンダコテを使ったほうが失敗が少なくなる。
初心者ならばLEDのハンダ付けには多分苦戦するはずだ。コテ先温度を高めにして予備ハンダをLEDの端子に盛り、配線側にも予備ハンダを多めに盛って、予備ハンダ同士を結合させるようにするといいと思う。しつこく熱し続けるとLEDを破壊することもあるので注意。
配線の皮むきも慣れればカッターナイフでも出来ないことはないが、安物でいいからワイヤストリッパーを使ったほうがストレスがなくていいと思う。

Petit Croutonなどの制御基板は本来完全に絶縁するのが望ましいが、Petit Croutonの包装フィルムが絶縁体なので、それを加工して筒状の覆いにしてしっかりと包むのもありだ。包んだものを電池ケースにベルクロファスナー(マジックテープ)や両面テープで括りつけて固定するといいだろう。ヒルトを激しく振ることもあるので固定は厳重に。
絶縁の例(Crystal Focus基板)。ヒートシュリンクを用いている。

ここに挙げたパーツ構成では充電ポートを用意していないため、電流がPetit Croutonに流れっぱなしになるが、待機電力はわずか3mAなので気にする程でもない。気になるようなら、使用しないときは電池を抜く運用にすればいい。

一番シンプルな構成にして見積もってみると、大体300ドル。1ドル80円とすると24,000円(送料が別途30ドルほどかかる)。PetitCroutonだけでも150ドル(約12000円)するので、どうしてもFXライトセーバーよりは高くなる。

2013.4追記
65ドルのNano Biscotteを使うなら220ドル程度となるが円安の現在のレートだと22,000円に。

支払いはクレジットカード(VISA、MASTER、AMEX)か、Paypalが利用できる。

発注後は2、3週間ほどで届く。運が悪いと税関に引っかかって関税を掛けられて800円ほど追加出費する羽目に。米国の郵政公社であるUSPSを利用して発送されるので、USPSの提供する追跡サービスで荷が今どこにあるかを調べることも出来る。日本国内の配達は日本郵便が担当してくれる。

アクセントLEDやFoC、ロックアップ、充電ポートなどの機能を使いたい場合、ハンダ付けが必要になったり、ヒルト内パーツの固定方法も変わってくるが、それらについては他の作例を参考にするとよいだろう。凝りだすと色々大変っすよ。

3 件のコメント:

  1. スターウォーズファンなら絶対に憧れるライトセーバー!!
    かっこいいですよね。自分も中学生ながらもう
    ルーカスの銀河の虜です。
    中学生でもこのライトセーバーって作れますか!?
    また費用はいくらぐらいですか?

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    1. どうもこんにちは。

      費用はピンきりですね。ここに上げたような作例で作るとなると材料費だけで3万円ぐらいかかっちゃいます。

      後はハンダコテとかの工具類も必要に応じて購入することになりますから、プラス1万円ぐらい考えたほうがいいでしょうね。

      更にクレジットカード必須なので、中学生さんだと親御さんの許可が居ると思います。なかなかハードルが高いかも知れませんね。

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  2. 現在高校生の者です。
    中3末からセーバーの製作を始めました。これまで3本の製作をしましたが、終始、ヒルトは木材とプラスチックに頼っています。
    光量、配線、サウンド等の技術が至らず、フラッシュライトをそのまま組み込んでは(光度等)納得いかずTCSSに目を向けましたが、懐がキツいです。
    どうか、自作への道を開けて下さい。

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